まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

友人ではない

患者ー医師関係のモデルとして、積極・消極型、指導・協力型、相互参加型という3つのモデルがある。積極・消極型は、患者を治療するだけで患者からは何も求めないもの、これではなんとなく医師の押しつけに近い。指導・協力型は医師が指導して、患者さんにこれが最良ですよというものを提供する、これも割と一方的であり、最後の相互参加型において初めて、患者さんの価値観や自主性、経験を尊重し、すべては平等であるという考え方で、医療が行われる。


これまでも医師が教師として診断と治療を教え、それに従わせていくという考えを忌み嫌い、患者とともに医療をすすめるという点で、相互参加型モデルが家庭医には望ましいとされてきた。


しかし、患者と医師は友人ではない。その間に、目的があり、契約があり、公平を保ち、感情を抑制し、お金が介在する。


だんだんと臨床に慣れてくるとこういった約束を破ってしまっていることに気付く。時に、気に入った患者の相談をいつでも受け入れ、本当は必要のない点滴をしてあげ、贈り物を拒むことができず、ときに泣き怒り感情をあらわにする。これは、友人関係そのものである。


それが行き過ぎたときに、いろいろなひずみが生じる。優しいのが家庭医、頼りになるのが主治医、ではあるのだが。すこし考えをかえるべきかもしれないと切に思った。

出典
スタンダード家庭医療マニュアル―理論から実践まで