まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

医療人類学

ハヤ引きして、慶応大学の文化人類学シンポへ出席。文化人類学と文化精神医学の接点、医療人類学とは?という初めて聞くようなテーマの場所に足を踏み入れた。慶応は三田、田町からの飲屋街を抜けて、新しい門構えのセミナー室で聞き入る。
医療とは、人間とはみたいなテーマが繰り広げられて、蘊蓄に圧倒されるのだろうなと思っていたところが、そうではなかった。もしかしたら、医者と、一般人の接点はここなのかもしれない、と思わせる感じ。医療が抱える閉鎖性と、それに踏み込んでこれない人類学の立場の、細い細い吊り橋のようなところ、医師の仕事は聖職で応召義務があるから、悪いことも出来ない、一般人とは隔絶していなければならない、と思っていたところから、そうではなくて、患者と同じところに立つにはどうしたらいいか、たとえ一生立てないにしてもそこに近づくにはみたいなことを考えるきっかけになりそうである。

グローバル化の時代へ (フェリス社会人大学講座)

グローバル化の時代へ (フェリス社会人大学講座)

聞くということをさらに深めるにはどうしたらいいか、ティアニーに代表されるような医療面接、問診のスペシャリストになるべきだろうか。もちろん、それもいい、診断の精度という点では。しかし、聞くことそのものに価値を置く、聞くことでインタビュアーと患者の距離が縮まるようなことがどの診察室でも起きているべきである。それは医療でなくなってしまうかもしれないけれど、そこを掘り下げるということも必要である。殊に家庭医としての視点からは強くそれを考える。傾聴こそ最高のもてなしであるのに違いない。