まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

家庭医診療所にかえるには。

特別講義 コミュニケーション学

特別講義 コミュニケーション学

家庭医としてがんばるぞと意気込んで向かった先は、本当に普通の診療所。内科の患者さんが列をなして外来を待ち、整形外科で注射もしてもらい、皮膚科がないなら近くを紹介する、尿の問題は専門の泌尿器科にすぐさま送り、リウマチとか専門的なものは大学病院に行きなさい、と平気で行ってしまうようなところ。こちとら穴はあるにしろ、ひと通りのプライマリ・ケアを勉強してるんだぞと意気込んできたのだが、受付ではねられてしまえば診察室までは辿りつかない。今日も隣の外来でそう行っている声がする、ここは診療所だからねえ、こんなのみたことないし珍しいから紹介してあげるよ〜とかなんとか。
スタッフも昔からの伝統的な外来に慣れている。よくわからない検査の出し方や独特のカルテ記載、何年もまとめられず多分先生の頭にしかないであろうサマリー。魑魅魍魎な世界に翻弄されちゃぶ台をひっくり返すような大規模な改革をやりたくなる。しかし、たったひとつの決まりですら変えることを嫌がる抵抗勢力となって迫ってくるのが常。「昔からそうですから」「伝統的にそうなんです」怪獣が。。ぐうの音もでない、こんなのでやっていけるのかと思った。
しかし約1年でいろんなことが変わった。病院みたいだと思った夜間外来連日もやっとのことで減らせることになり、来月からは子どもも診る。カンファランスも増え、スタッフ同士の声かけも挨拶もよくなった。役に立ったのはこの本。小さい職場は基本やりやすい、物事がちゃんと決まる、話し合いさえすれば。顔が見えている関係は素晴らしい。いかにネットを使っても、一回顔を合わせて一緒に酒を飲む関係はつくれない。とにかくこれをやりたいんで暫く付き合ってください、じゃなくて、こんなの良くないですか?こういうふうなの楽しいでしょう、っていうニーズに沿ったアプローチ。それに名前をつけるとしたら家庭医だよというふうにしたい。