まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

病院で家庭医(その4)

ここまで来てふと考える。病院に家庭医、ほんとうに必要なのか。


日本にはこういう病院が多い。

循環器内科、呼吸器内科、糖尿病専門外来があって救急がさかんな病院。消化器は外科が診る。脳外科と整形外科の手術も行っている。いわゆる総合診療科を掲げるが実際は各科専門医が担当する。

だいたいこういう病院には研修医はあまりいない。いても指導は徒弟制度、叱咤激励、当直中2日。熟練したベテラン医師がたくさんいて、治療成績はすこぶる良いし評判も上々。医者がコロコロ変わるのは仕方なし。


本当はこんな病院ばかりになってほしい。
家庭医が外来に揃っていてどんな相談にも乗ってくれる。入院が必要なら総合病棟でほとんどの病気をカバー、専門治療が必要なものは専門医と連携して治療、大学病院への紹介も行う。

理想的には血液内科と心臓以外をカバーする総合内科が病棟として存在するのがよいとされている。しかし、そんな素晴らしい病院は日本にも数箇所しかないし、中小病院ならなおさら専門医を揃えておけるほどの余裕はない。
もうひとつ、中小病院で家庭医養成が必要だった理由は、その箱にある。総合内科専門医は内科教育病院に居続けなければ取得できないし取る意味が無い。しかし家庭医療専門医なら、内科病棟医療、小児科、在宅、プライマリケアを含め、まさに日頃行っていて最も地域で必要とされていることを地で行く研修ができる。ほかの同じような病院もこれに乗らない手はないだろうと私たちは思っていたが、思ったより動きは遅かった。病院全体の研修を家庭医だけに絞ったのはうちの病院だけ。病院の医師のバランスから言えば良い面悪い面があったが、研修医が集まり続けたのは家庭医研修プログラムしかない。臨床研修改悪後の大学病院への回帰などを考えれば、納得できる結果だった。(それなりにつづく)