まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

印象的なカンファレンス

一人プレゼンターを決めておき、まず、患者さんの主訴を取り上げる。例えば、咳がでていたとして三週間続いている。これを「慢性の咳」として主訴にする。

慢性の咳

そうすると、司会、今思うとファシリテーターであったが、「咳の鑑別は何がありますか」と参加者に振っていく。学生あたりから幾つかでたところで、研修医に移りまた聞いて行く。
出尽くしたら、もう少し病歴を話してもらう。今のところ、主訴に関する現病歴を話すだけ、最初に簡単に既往を含めたプロフィールが話される。最初に既往をすべていってしまうと冗長になる。ここを切るのがファシリテーターの腕である。あくまで主訴から離れない。
経過を話したところで、これだけで鑑別診断を考える。身体所見には言及できない。してもいいが、印象とかが聞けるだけで、正確なバイタルはいらない。いくつ出るか。最近は緊急なもの、コモンなものを先に挙げろと言われるが、その日の雰囲気でシマウマが先にでてもいい。そんなのが思いつくのかとピアでレビューできる。
もちろん鑑別診断を挙げる時は理由を述べる。なんとなくとかはいけない。この陽性所見があるから、頻度が多いからなどの根拠が必要。
ここでは生物医学的な問題に集中した方がいい。家庭医に染まっていると、最初から社会的問題に触れたり、経験的にありえない疾患を捨ててしまったりするが、それではよくない。一応心に止めておく姿勢がほしい。
耐えて耐えて、身体所見も検査もなして、鑑別診断を検討する訓練である。これができて始めて、診断が正確なものになる。面白いんである。これはお昼のカンファレンスで行われていたが、毎回緊張する。誰がプレゼンにさされるか、司会になって上手く面白く進行できるか、真剣勝負の場だった。ニコニコ笑っているのにそこに手ぬるい感じはなかった。
いまは、研修医もお客さんでこういう感じではないし、直感よりデータを先にみればいいのでこうやる必要もないと思うのだが、あれはあれでとても印象に残っているのはやはり普遍的だったからかなあと思うのである。