家庭医療専門医として、総合診療専門医の指導医として
今回の専門医制度改革の目玉は、学会主導からの脱却であったと思う。各々の学会の認定から第三者機関へ評価認定に移行するという作業のはずだった。
質を良くする方向で進んでいくはずが、いつの間にか地域医療が崩壊するという話にすり替えられた。
地域に若い研修医が来るのはいいことか、もちろん研修としてならいいと思う。指導医がいるだろうと考えるから。
でも、これまでは指導医はいなかった。島にも3年目で1人で行かされていたし、ほとんど指導とは呼べない叱咤の中で働くことになっていた。
もうちょっと上の脂の乗った医師が来るのが一番いいに決まっている。だから患者は地方の総合病院にかかるのがよいし、それはつまりいい年齢の医師がたまっていたから研修医にあたる可能性が低いからだ。
研修医にへき地勤務の義務を押し付けてもだめだ。システムのないところでは教育もできない。大体若い医者は都会に住みたい傾向があるのだからうまくいかない。
専門医とらなくてもいい、というのも何だか訳がわからない。じゃあその人たちの質保証は誰がするのか?患者はどうやって判断する?まったく医者中心主義から変わっていない。
私自身は、総合診療医として、赤ちゃんから100歳越えの人まで、疾患関係なくいらっしゃる診療所で働くことにやりがいを覚えている。5年に一度ある更新制度をクリアするためになんとか少しずつ勉強しポートフォリオを書き、医学の進歩からおくれないように努力している。開業している医師も同じように働いているだろうが、要はそれ用のトレーニングができているかという点になる。
だったらお前は何かしないのか、と言われると偉くもない私は何もできない。実習に来る学生に専門医制度の堕落を説いて、総合診療いいよというだけだ。別学会作るのもどうかと思うし、デモをする気にもならない。アダムカヘンの交渉法を身につけていたら、もっとうまくいったんじゃないかと思うのだけれどもう遅いだろうか。あとは密やかにブログを書くぐらいしかできない。
ではまた。
- 作者: アダム・カヘン,Adam Kahane,ヒューマンバリュー,高間邦男
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