仕事関係から
木曜日は重い腰を起こして横浜の上大岡まで電車で向かった。一度行ってみたかった横浜の在宅医足立先生主催のの講演会、今回はなんと岸政彦先生とあってぜひとも行こうと決めた。
この本を読んでいたころ、多分地域の健康についてのインタビューを自分でもやろうとしていて、その日常を切り取った美しさに感銘を受けつつも、医師の特殊性から立ち止まってしまっていた。
日々役に立つことをしているという安堵からそれ以上の思索をやめてしまっている日常があった。できたら医療にまつわる由無し事を質的研究に乗せたいと考えていた。
質的社会調査の方法 -- 他者の合理性の理解社会学 (有斐閣ストゥディア)
- 作者: 岸政彦,石岡丈昇,丸山里美
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2016/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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これ読んだらできるようになるかなと思ったがそんなことはなかった。一人で進めるには大きなことすぎ、研修で学んだのは量的調査の方法が主だったし質的研究がそれほど役に立たないと言われることが多かった。
"何か医学の発展に役立つことをしなければならない"
荒川でまずやったのは、区役所の前で将棋を指している人に話を聞くことで実は私の偏見を覆す結果が待っていた。暇だからそこにいる、区役所からなんらかの恩恵を受けるためにいるおじさんたちという印象から、それぞれに人生を抱えた個人の拠り所だとわかる。はじめ単発的に始まった遊戯はいくつかの変遷を経て統治者が現れ、区の公認の将棋場になった、夏の暑い時には経口補水液が配られ、酒を飲むものは排除された。ひとりの人は妻に先ただれ、他の人は定年して居場所がなくなりここの噂を聞きつけて区外から通っていた。居場所があり、役割があり、そこにある意味があった。
これを私的な会合で披露したところ結構な反応があった。少し喜び、本当は居酒屋で色々聞いてみたい、医者として健康をテーマにしたインタビュー、自分が不健康だと思っているならなぜ生活習慣を変えられないか、を聞きたかった。知り合いを集めて、それを語る会をしたところ至極盛り上がり味をしめたのだが、市井の人々にうまく聞くのはなかなか実行できなかった。
生活史をテーマにする先生は、沖縄をテーマにしてインタビューをされている。沖縄戦を語る、とにかく聞く、遮らずに、いつまででも聞く。僕も沖縄が好きで一年おきに必ず休みを過ごすが、沖縄の中身には触れることはない。沖縄そば、ビーチリゾート、海ぶどう、ガラス細工、それを一通り巡る以上のことはなかった。従兄弟が沖縄に移住しているが東京に帰る気はないらしいと聞き、それぐらい居心地のいいのだなあと思ったりする。朝までバーベキューとかしてしまうのだから。
懇親会で岸先生にご挨拶して、社会学に擦り寄る医者というものについて考えた。医学での出世を諦めたか、よっぽど嫌なことがあったのか、文系かぶれか、自分も含め役に立たないことへの憧れなのかと思う。役に立つことを毎時求められることで本質的なことにたどり着けていない医療。ナラティブの大家などこっぱずかしい。患者をただ治すのではなく、良く治すことにこだわるのが総合診療業界。患者側には伝わっていない。
社会学というものがあまりわかっていないことは自覚しつつ、大学受験時もああ一橋社会受けたいなとか思っていたから結構長い好きである。社会科が特段好きでもなかったのに。でも世の中がどうなっているかをもっと知りたいと思うことが社会学に惹かれている理由かもしれない。40半ばになっても未だに何もわからない。
最後にその日泊まったホテルの写真。先生は必ず泊まったビジネスホテルの写真撮るのだそうだ。もう二度と見ることはない部屋を思うと切なくなるとか。そういうことはなにかしらある。真似して外観だけ撮ってみた。
駄文失礼。
ではー。