まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

家庭医開業医の教育

まずは一般的なことから話します。

仕事を始めて何十年と研修病院や大学にいる頃は定期的に研修医または専攻医が回ってきて、地域医療の研修を行っていました。家庭医志望の学生が見学に来て、現場を見ていくということも多かったので、割と教育しているなという実感がありました。

一人で診療していると教育機関とのつながりを持たない限りそういった機会はなくなります。先輩後輩のつてや紹介というのはありますが、だんだんと少なくなっています。今は初期研修や後期研修のプログラムに組み込まれていることがその条件になっています。

教育をするメリットは一番に人を育てることで人材が集まってくることがあります。実際、研修医をたくさんとっている病院は労働力としての彼らが多くいます。その安い賃金で病院の業務がスムーズに動き、活性化もしてくれます。そこからスタッフとして活躍してくれる人が育ってくれれば持続的に医療が行えることは確かです。

それに対して、考えられるデメリットで一番大きいものは教育にかける時間と手間です。診療で忙しいにも関わらず、経験の浅い医師に診療させてサポートする、時間外にはそのフォローも行う。自分がやった方が早いことを任せられなければ教育していることにはなりません。また、その学習進度の違いから、指導にかかるストレスは大きいものです。しかもほとんどの場合日本では教育に対価が支払われることはありません。土日の講習会も自腹でいく必要があります。

それでも教育をするのは、自分自身が成長する機会と考えるからです。毎日ルーチンをこなしているだけだとどうしても新しいことが入ってこない、同僚との勉強会をする時間も取れないとき、常に研修者のいる状況はプレッシャーを与えてくれます。ある程度の緊張感がないと仕事もだらだらしてしまい、これでいいかなと思うようになります。外部の目という意味でも教育することは役立っていると思います。

今の環境で教育が行えているかというとノーです。研修医の受け入れもないし、専攻医やフェローもいません。時々、見学の先生や在宅医の研修が単発で入るだけで、あとは看護師や理学療法士の研修が施設としてあるだけです。何か伝手がないと難しいかなとも思うので頑張ってみてもいいかなとは思うのですが、受け入れのハードルはそれなりにあります。学会では以前からそういった施設向けのガイドも発行されており参考にはできます。

 

と書いてみて、なんだか面白くなくなりました。人に教えるということがなんだか押し付けのように感じてしまっています。これまでの教育ってやっぱりつまらないものになっています。

 

一つに知識の押し付け。覚えた知識をまとめてプレゼンしてそれを聞かせるやり方が普通ですが、もうその時間も勿体無いと思います。今はみんなYouTubeで勉強している、いつでもどこでもそんなものはみれるので、集合して椅子に縛りつけるなんで時間の無駄かも。

次に診察に張り付く実習。ほとんどの時間をじっと我慢の子にでいて、たまに面白いと声をかけられる。それってロールモデリングなのかもしれませんが、どっちも苦痛です。医師患者関係はみれるかもしれませんが、本来のすがたではないかもしれない。

あとは学習者側の変化。以前のように徒弟制度にならって静かに学ぶなんてことはなく、それこそつまらないとか意味がないとか平気にいってくる学習者が多くなってきました。それは本来いいことなのですが、指導側が対応できていないのでどうにもストレスになっているところがあります。

 

ということで、未だ教育については踏み切れていないところですが、少しずつ意義のあるものをやっていきたいなあと思います。