まちづくりと家庭医2

家庭医がコミュニティを育てる日々の記録

【家庭医療】がん専門医と家庭医の連携

病院との連携に悩む家庭医は私だけではないと思いますが、なんとなくその時々の事情があるので自分だけで悩んでいる気がして、これは何とかならないだろうかといつも感じています。それこそ研究にならないものかと。

ふうっと息をつき、どこにもやり場のない感情に苛まれていると、ふと手に取った家庭医療の古典。そこには答えがありました。 

Textbook of Family Medicine (English Edition)の第2版のp385 に掲載されている

www.ncbi.nlm.nih.gov 

Wood の研究について訳して読んでみます。

 

  • 家庭医と癌治療医の両方のコミュニケーションの問題の質的研究
    • 問題は患者がもとの主治医に戻されずに癌専門クリニックでフォローされていた
      • stage Iの乳がんであったとしても
  • 家庭医の不満の元はフォローアップにおいて特別な役割を専門医が認めないこと
  • 乏しいコミュニケーション
    • 正しい専門家に到達することの難しさ
    • 同じ患者をいくつもの専門家が診ている
    • 電話のような直接のコミュニケーションが不足している
    • 退院やフォローアップの情報がない
  • 家庭医の感情
    • 自信のなさ
    • 専門医のサポートがないことの恐れ
    • 不十分な知識
    • 十分ではないことを批判されるのではないかという恐れ
  • 自信のない家庭医はがんのケアから離脱しがちになる
    • 経験が少なくなり、さらに自信喪失する
  • 自信のなさは患者にも伝わる
    • 患者はがんのクリニックにもかかっている
    • がんのクリニックの負荷は増加し
    • 家庭医が興味がないと信じられているクリニックは
      • アシスタントを雇うかもしれない
      • 患者はクリニックから家庭医はもはやケアに含まれないというメッセージを受けとる
      • いうまでもなく
  • 癌治療医のコミットメントや癌治療の知識は様々
    • コミュニケーションの問題は時間の欠如で妨げられる
      • 家庭医へのコンタクトの難しさ
      • 個人的な関係性の希少性
  • 癌治療医は家庭医に批判的
    • クリニックでの病い(の語り)や検査結果を送らないから
  • 家庭医と癌治療医両方が親密な連携を望んでおり、それぞれの主張はとても似ていた
  • プライマリケアレベルでの水平統合
    • 垂直統合
      • ITで困難を取り除く
    • その他
      • 対話
      • 相互理解
        • プライマリケア医、コンサルタント、患者、ほか

 

時間がない中での専門医(2次病院)との連携では、唯一、直接電話で話すというのがお互いにわかり合う方法だったりします。しかしそれも、もともと同僚であったり、カンファランスで挨拶を交わすなど顔の見える関係であってこそできるものです。全く会ったことのない人とどうコミュニケーションを取るかは難しい問題です。

いまならzoomを使えばいいのかもしれませんが、自分の近隣病院が使っているとは限りませんし、ファクスや郵送での連絡がまだ当たり前のところもあります。退院前カンファランスでさえ普通に行われている状況ではありません(コロナ禍がよい言い訳になっているかも)。

これは多職種連携でもあるのですが、最近いいなと思っているのはLINEでのグループチャットで、いろいろと気にする方はいるでしょうが、クロスプラットフォームで使えるものとしては誰でも使えるぐらい普及しているので、とりあえず連絡はとれます。

私のスタンスとしては、相手に合わせてそのやり方を変えることしかない、と思っていて、いくつかを組み合わせてがんばっていこうという感じです。最近ではMCSのような無料クラウドを使っている事業所も増えているので、このあたりでも広めていきたいと思います。

では〜。